マンションの長期修繕計画とは|令和3年改定ガイドラインのポイント

マンションの長期修繕計画とは|令和3年改定ガイドラインのポイント

マンションでは、長期修繕計画を作成することが重要です

長期修繕計画を立てて計画的に建物の補修や機能の向上を図り、かつマンションの資産価値を維持向上させるためです。

基本的に長期修繕計画作成の主体となるのはマンション管理組合ですが、どのように作成するべきか悩んでしまう場合もあるでしょう。

そこで今回は、長期修繕計画の基礎知識や、令和3年9月に改訂された長期修繕計画作成ガイドラインについて解説します。

長期修繕計画とは

長期修繕計画とは

長期修繕計画とは、マンションの大規模修繕などを、長期的な期間を見据えて作成する計画です。

長期修繕計画を作成する意義として次の2つがあります。

  • 経年劣化に対する定期的な補修
  • 新しい時代への対応

そして、計画には、概算費用や計画の詳細などを記載する必要があります。

また、一度作成すれば良いものではなく、定期的な見直しが必要となります。

長期修繕計画の目的

長期修繕計画作成の大きな目的は、先ほども述べたとおりマンションの寿命延長や快適な住環境の確保のためです。

その他にも、具体的には以下のような目的があります。

  • 将来的な工事や修繕の費用を事前に把握できる(備えられる)
  • 修繕積立金の根拠を示す
  • 工事をスムーズに進められる

長期修繕計画は、マンションそのもののためでもありますが、区分所有者のライフスタイルにも大きく関わってくるためとても大切です。

住民の理解を得てスムーズに工事に取り組めるよう、長期修繕計画を作成しておきましょう。

長期修繕計画に関連する条文

長期修繕計画については「マンション標準管理規約」や「建築基準法」などで条文が定められています。

それぞれを抜粋して紹介します。

第32条 管理組合は、次の各号に掲げる業務を行う。
三 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理

引用元:マンション標準管理規約(単棟型)|国土交通省

(維持保全)
第八条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。

引用元:建築基準法|e-GOV

上記のように、長期修繕計画作成は管理組合として必要不可欠な業務です。

管理組合は、長期修繕計画について、正しく理解し作成していくことが求められます。

長期修繕計画で定める内容

長期修繕計画で定める内容

長期修繕計画の項目は、マンションの立地や環境あるいは社会生活の変化によって異なります。

参考として、主な項目は以下のとおりです。

  • 建物・施設・設備の対象部位
  • 工事の仕様
  • 修繕周期
  • 単価数量
  • 工事推定価格
  • 修繕実施予定年度

マンションの特性に合わせて、建物や設備の耐用年数を推定し、修繕時期を定め、新しい時代背景に基づいて機能のバージョンアップを図ります。

長期修繕計画の見直しをする目安

長期修繕計画の見直しをする目安

長期修繕計画は、5年おきに見直すことが望ましいといえます。

建物や設備の劣化、生活様式などの変化があるためです。

5年ごとに見直すことにより、より時代に則した内容で計画を進めることができます。

また、長期修繕計画は、40~50年先のマンションの在り方を考えながら進めていくことが重要です。

長期修繕計画を見直す理由

長期修繕計画を見直さなければいけない理由は、建物の劣化状況にタイムリーに対応すること以外に、時代背景に適切に対応するためです。

とくに実際の修繕実施時期の決定は、事前の調査や診断が必要であるため、細かく見極めをしなければいけません。

また、長期修繕計画は、国土交通省によるガイドラインがありますが、ガイドラインが改定されるケースもあります。

数十年前の計画のままにしておくと、新たな工法、工事単価や資材単価の変化に対応できないばかりか、新たなニーズ(インターネット環境、バリアフリー、防犯など)にも当てはまらない場合もあるので、必ず定期的に長期修繕計画を見直す必要があるといえます。

長期修繕計画作成ガイドラインの変更ポイント

長期修繕計画作成ガイドラインの変更ポイント

長期修繕計画作成ガイドラインとは、国土交通省が発行している長期修繕計画作成のためのお手本です。

長期修繕計画を作成する際には、このガイドラインに則しつつマンションの個々の事情に対応したものを作成することが求められます。

最近ですと、令和3年9月にガイドラインの内容が改定されました。

以下では、ガイドラインでどのように改定されたのか、知っておくべきポイントについて解説します。

計画期間

これまでのガイドラインでは、計画期間は「25年または30年」とされていました。

今回の改定では「30年以上かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とする」となりました。

長期修繕計画の見直しについては「5年程度ごとに調査を実施し、その後1年から2年程度の間に見直しをしましょう」とされました。

修繕積立金の積立方法

修繕積立金の積立方法については「計画期間に積み立てる修繕積立金の額を均等にする積立方式を基本とする」と示されました。

これは「均等積立方式」と呼ばれているものです。

新築分譲のマンションは、段階的に修繕積立金を増額する 「段階増額方式」が多く採用されていました。

段階増額方式は入居当初の費用負担が少なくすむというメリットがある反面、将来的には積立金額が増大していくというデメリットがあり、中にはこの負担が重くのしかかってきて支払い困難に陥るというケースもあります。

現在、段階増額方式になっているならば、均等積立方式への変更も検討しましょう。

修繕積立金の設定方法

改定後のガイドラインでは、修繕積立金の設定方法も明記されるようになりました。

長期修繕計画の内容や修繕積立金の額などの、チェック方法が示されています。

これまで長期修繕計画を作成していた場合は、変更に伴い修正のための作業が必要となります。また、これから作成する場合であれば参考にしましょう。

適切な長期修繕計画を作成するには

適切な長期修繕計画を作成するには

長期修繕計画の作成や見直しには、時間も手間もかかります。

そのため、マンション管理組合のみで適切な計画を作成するのは難しいでしょう。

国土交通省のガイドラインを参照するとはいえ、ガイドラインをすべて読んでいくのも時間がかかります。

長期修繕計画でお悩みであれば、ぜひマンション管理士にご相談ください。

マンション管理士にご相談いただくことで、その管理組合の実情にあった長期修繕計画作成のお手伝いができます。