管理会社との上手な付き合い方は?任せっぱなしにしない信頼関係の築き方
マンションの管理を円滑に進めるうえで、管理会社との関係性はとても重要です。
ところが、「全部お任せでいい」と思っていた結果、必要な修繕が後回しになっていたり、住民の不満が溜まっていたりするケースも少なくありません。
信頼関係を築くには、管理会社に任せるだけでなく、管理組合自身が主体性を持って関わる姿勢が求められます。
本記事では、管理会社と良好な関係を保ちながら、マンションを健全に維持するためのポイントを、マンション管理士の視点で解説します。
管理会社との関係がうまくいかないときに起きる問題
管理会社はマンション管理の実務を支える重要なパートナーです。
しかし、両者の意思疎通が不十分だったり、管理組合がすべてを任せきりにしてしまうと、さまざまな問題が発生します。
この章では、よくあるトラブルのパターンを紹介し、関係構築の必要性を理解してもらいます。
修繕や点検が「言ったのに進まない」
「共用灯が切れていると伝えたのに、数週間放置されていた」「配管の劣化を報告したが、調査が一向に進まない」など、対応の遅れはよくある苦情の一つです。
原因はさまざまですが、管理会社が「指示待ち」になっていることも多いです。
指示する側の理事会が方針を明示しないまま任せきりになっている場合、責任の所在が曖昧になりがちで、トラブルの原因になるケースもあります。
担当者が頻繁に変わって引き継ぎが甘くなる
大手管理会社では、担当者の異動が頻繁に発生します。
そのたびに理事会側が一から説明し直さなければならず、時間も労力もかかります。
しかも前任者との引き継ぎが不十分だと、「言ったことが伝わっていない」「以前の方針と矛盾している」といった混乱を招き、トラブルの原因になります。
組合と住民との板挟みにされる
住民からのクレームが増えると、管理会社がその対応に苦慮するケースがあります。
場合によっては、「これは理事会に確認してください」と言われ、管理組合側が火消し役になる場合も。
役割分担が曖昧だと、どちらが責任を取るべきか判断が難しくなり、信頼関係にヒビが入ってしまいます。
管理会社に「任せすぎない」ために知っておくべきこと
管理会社は便利な存在ですが、すべてを丸投げしてしまうのは危険です。
管理組合が主体であることを自覚し、任せる範囲と関与する範囲を整理しておく必要があります。
管理会社に「任せすぎない」ために、以下のことを知っておきましょう。
管理会社はあくまで「受託者」
管理会社は、管理組合との契約に基づいて業務を受託する立場です。
つまり、主体はあくまで管理組合であり、意思決定の最終責任も組合にあります。
誤解されがちですが、「プロに頼んでいるから安心」ではなく、「契約に沿って動いてくれる存在」であるという認識を持つ意識が大切です。
契約内容を理解し、できること・できないことを見極める
管理会社が担う業務範囲は、契約書に明記されています。
日常清掃、会計業務、設備点検などが典型ですが、たとえば「広報誌の作成」や「イベントの運営」などは契約外の場合もあります。
できること・できないことを把握していないと、「頼んだのに動いてくれない」といった誤解が生じやすくなるのです。
理事会の役割を明確にし、管理会社と分担する意識を持つ
「何でもやってくれる」という期待を持ちすぎると、管理組合の役割が希薄になってしまいます。
実際には、管理方針を決めるのは理事会であり、管理会社はその実行を支援する立場です。
パートナーとしての意識を持ち、対等な関係で意見交換をしていく姿勢が求められます。
管理会社との信頼関係を築くための具体的なアクション
日々のやり取りの中で、信頼関係は徐々に育まれていきます。
ここでは、現場で実践できる関わり方や、トラブルを未然に防ぐための工夫を紹介します。
定例会議での情報共有を習慣化する
月1回、または2カ月に1回でも、定期的な打ち合わせの場を設け、報告・相談・意見交換を行うのが重要です。
書類の提出だけでなく、現場の状況や課題、改善案を直接聞ける場があると、双方向の信頼が築かれます。
また、議事録を残しておけば、担当者の変更時にも引き継ぎがスムーズになります。
担当者と信頼関係を築くには「言葉のキャッチボール」が大切
要望や意見を伝えるとき、「感情的にクレームを言う」のではなく、「背景や目的を共有したうえで伝える」ことが大切です。
たとえば「草が伸びているから早く刈って」と言うのではなく、「見た目の印象が悪く、住民からも指摘されている。来客も増える時期なので早めに対応してほしい」と伝えるだけで、相手の理解度と行動は変わります。
無関心な組合では「いい提案」は出てこない
管理会社の担当者は、組合の反応や姿勢を見ながら提案の質を調整しています。
関心が薄く反応がない組合には、最小限の業務しかしなくなる傾向があります。
逆に、「ここは改善できるか?」「他のマンションではどうしているか?」といった姿勢を見せることで、管理会社側もより積極的な提案を行ってくれるようになります。
トラブルが続く場合の見直しと第三者の活用
いくら誠実に対応していても、管理会社との関係が改善されないこともあります。
その場合は、契約内容や体制の見直し、あるいは外部の専門家の導入も選択肢となります。
契約内容や管理仕様を定期的に見直す
契約内容は、多くのマンションで「自動更新」になっているケースが多く、実際には何年も同じ内容のまま放置されていることもあります。
マンションの規模や状況が変われば、必要な業務も変わるため、2〜3年に一度は仕様書や契約内容を点検し、必要であれば見直す機会を設けましょう。
管理会社変更という選択肢
あまりに対応が悪かったり、誠意のない対応が続いたりする場合には、管理会社の変更を検討するのも一つの手です。
ただし、感情的な判断ではなく、比較検討を行いながら、透明なプロセスで進めるのが重要です。
複数社の提案を受け、費用だけでなく対応品質も含めて検討する視点が求められます。
マンション管理士など第三者のアドバイスを活かす
外部の専門家であるマンション管理士に相談すると、冷静かつ客観的なアドバイスを受けられます。
契約内容の精査や、管理仕様の見直し、理事会の運営支援など、専門知識をもとにマンションに合った解決策を提示してもらえるため、「関係を壊さずに改善する」ための橋渡し役としても有効です。
対等なパートナーとして、より良い関係を目指そう
管理会社は、マンションの維持管理に欠かせない重要な存在です。
しかし、丸投げしてしまうと、思わぬトラブルや不満につながる場合もあります。
大切なのは、管理組合が「主体」であるという意識を持ち、管理会社と対等な立場で関わりましょう。
報告を受けるだけでなく、意見を伝え、課題を共有しながら、一緒に解決していく関係性が理想です。
もし現在の関係に不満がある場合は、契約や体制の見直し、専門家の活用も視野に入れながら、より良いマンション管理を目指していきましょう。