マンション共用部分の地震保険、いる?いらない?

こんにちは。マンション管理士の佐藤です。

私たちが暮らす日本は地震列島と言われており、とても地震が多い国土です。

災害に強い街づくりが提言され、政府や自治体を中心に取り組みが進んでいますね。

一方、建物の方も耐震性能の向上などで地震に備えた建物が近年増えてきています。

(これを書いている時にも、実際に地震がありました。けっこう揺れたなと思ったら震度3でした)

そして、経済的な面での備えの一つに地震保険があります。古くから備えあれば憂いなしと言われておりますが、本当のところはどうなのでしょう?

今回はマンションの地震保険、特に共用部分にかける地震保険について考えてみたいと思います。

まず、そもそもこの地震保険ってどんな保険なのでしょう?

地震保険とは、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失等による損害を補償する保険です。火災保険で補償されない、地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・ 拡大した損害をカバーしています。

この地震保険は国が法律に基づき運営する制度となります。

詳しくはこちらをご覧ください。

そしてこの地震保険は単独で加入することはできず、必ず火災保険とセットでの加入が必要となります。

では共用部分に果たして地震保険が必要かどうかについて考えてみたいと思います。

前にも述べた通り、地震が原因の火災や、揺れによる建物の損壊は火災保険ではカバーされません。

区分所有者が個人で加入している地震保険は共用部分の損害には適用されませんから、共用部分の損害に備えるためには管理組合が各区分所有者とは別に加入が必要となります。

仮に地震が起きて共用部分である外壁や柱、スラブなどにひび割れが起きてしまったり、建物自体が傾いてしまった・・・なんてケースを想定してみましょう。

管理組合は先ず被害の状況がどれくらいなのかを調査する必要があります。

この調査に要する費用は標準管理規約によれば修繕積立金を充てることが出来ます。

そしてこの調査結果を元に今後の対応を決めることとなります。

対応の方法としては建物の被害の状況にもより、その程度に応じて適用される法律も変わって来ます。

【建物が一部滅失した場合】

  1. 建物の復旧
  2. 建替え
  3. 建物敷地売却
  4. 建物取壊し敷地売却
  5. 取壊し

【建物が全部滅失した場合】

6.再建

7.敷地売却

ここで挙げた1~7の対応について、どういった法律が適用となり、どのような手順が必要となるかについてはまた別の機会にお話したいと思いますが、いずれの方法を取るにせよ集会による決議が必要となります。

仮に⑥の再建となった場合はそれなりの再建費用が必要となるのは想像に容易いですが、それ以外の場合、例えば①の復旧にしてもかなりの支出を覚悟しなくてはならず、修繕積立金や管理費等が潤沢な管理組合ならその中で賄うことも可能かも知れません。

しかし多くの場合は費用が足りず、集会で決議を取ろうにも合意に至らないといことが考えられます。

それなら、自分の部屋を売ってマンションの共有関係から離脱するという方法も考えられますが、そもそも被災したマンションが適正な価格で売却できるのかといった問題もあります。

また、上記の決議に反対の人がいた場合には、法律の手続きによって売渡請求をすることができますが、この時にもやはりその対価としての支払いに資金が必要となってきます。

やはりマンションの共用部分にも“備えあれば憂いなし”だと私は考えます。

実際に阪神淡路大震災や東日本大震災でも多くのマンションが被災しましたが、最終合意に至るまでに多くの年月を費やしています。

統計によれば、国内のマンションの共用部分にかける地震保険の加入率はまだ40%に満たないというデータもあります。

大きな災害が起きた時に、何と言っても必要なのはできるだけ早く元の生活に戻るということではないでしょうか。

住まいは大切な生活の基盤だと私は考えます。

この機会にまだ地震保険に加入していない、或いは今の地震保険の内容でしっかりとカバーされているのだろうかとお考えの管理組合や役員の方は、是非一度、当社へ気軽にご相談ください。

出典:災害写真データベース(財団法人消防科学総合センター)